親知らず、小臼歯を合計8本抜くことはあるの?
このページは、「抜歯の設計(小臼歯抜歯+親知らず抜歯)」の判断がテーマです。
「親知らずが前歯の歯並びに影響する理由(前歯が乱れてきた背景)」の解説は、内容が重複しないよう、親記事にまとめています。
▶ 前歯が乱れてきた?その原因は「親知らず」にあることがあります
当方のスタッフの一人のレントゲン写真です。
小顔で歯が大きく、口元が出ていた上にガタガタがきつかったため、他院で数年前に4本歯を抜いて矯正治療をされたようです。
スペースが足りないので親知らずがまっすぐに生える事ができずに後ろから押しつつあります。
このまま放置すると、奥歯側の条件が歯列全体に影響し、前歯側の変化として表面化する可能性があります。
小臼歯を抜歯したことで発生するスペースはわずかですから、こういうケースは多いです。合計で8本抜歯することになります。
親知らずを抜歯せずに放置すると親知らずの根が長くなり、抜歯の難易度は上がり、歯並びは悪くなります。
また7番目の歯と親知らずの間が虫歯になることも多いです。

ワイヤー矯正しかなかった時代は、こういう治療が定番ではあったと思います。
ただ、小さい歯を抜歯したことで出現するスペースはそれほど多くはありません。
インビザライン治療に慣れた今となっては、大臼歯が前方に傾斜しているこのケースは、成長期の段階で顎のスペース条件を整え、親知らずの早期抜歯のみで小臼歯は抜歯せずに治療できた可能性も考えます(症例差があるため、断定はしません)。

抜歯にデメリットはありますか?
- 歯の本数が減る
通常は親知らずを除けば、永久歯は全部で28本あります。矯正治療する場合、2本か4本抜歯するケースが多いです。症例にもよりますが、出っ歯で上顎が出ていたら上だけ二本抜歯することがあります。4本抜くと合計24本になってしまいます。
- 舌のスペースが少なくなる
歯を抜いたことで、前歯が内側に入れば舌の動けるスペースが少なくなります。舌がお口のなかで後方に位置して、気道が狭くなる事があります。機能面を無視して、審美的な理由だけで永久歯を抜歯して歯列矯正を行うことは好ましくありません。
- ほうれい線が深くなる
抜いた歯がもともとほうれい線付近の皮膚に張りを与えていた場合、年齢によっては、ほうれい線が目立つこともがあります。
- 歯が骨から出ることがある
今までCTレントゲンがあまり使用されていませんでしたので、こういったリスクは見逃されてきました。
下の前歯が内側に移動して、下顎の骨の内側から出てしまうリスク(ビデオの赤い部分)があります。
特に下顎の前歯の部分の骨が薄い方は小臼歯の抜歯治療は要注意です。
常識的に考えて、骨のない方向に歯を移動するにはリスクが伴うのは明らかですが、CTレントゲンが普及するまではこういったリスクは見過ごされてきました。

歯を抜くことにメリットはありますか?
- 口が閉じやすくなる
抜歯することによって前歯が内側に入ります。それによりお口が閉じやすくなります。
- 口元が変化する
歯を抜くことで前歯が内側に入ると、口元が変化することがあります。ただし、変化の出方は個人差が大きく、顔貌の設計は「何を目的に、何を守るか」を含めて慎重に判断します。
- 治療期間が比較的短い
上下顎を拡大するために小さい頃から装置を使えば、当然ですが治療期間は長くなります。拡大をせずに永久歯の交換を待ってから上下の顎に矯正装置を付けて小臼歯を抜歯すれば診療期間は比較的短くなります。
ただし、治療期間の短さだけで設計を決めると、長期の安定や機能に不利益が出ることがあります。ここは「診断→設計→治療」の順番が重要です。
抜歯のタイミングは?
最も頻度の高い抜歯部位は上下左右の第一小臼歯です。当院では多くのケースで一日に2本小臼歯を抜歯します。親知らずに関しては口腔外科の先生に依頼しています。抜歯可能な時期は口腔外科の先生がお決めになり、患者様とのご相談になります。