8020の高齢者の口もとからわかる、前歯の角度の本当の話

8020の高齢者の口もとからわかる、前歯の角度の本当の話

SNSでは「下の前歯は22度が正しい」という情報が広まっています。
しかし、この22度という数値は白人の正常咬合者を基準に作られた値であり、日本人や他の民族にそのまま当てはまるわけではありません。

この記事では、高齢者の咬合写真と、複数の学術研究をもとに、
「長期的に健康だった人の前歯角度はどうなっているのか」を科学的に解説します。


目次

1. 8020達成者の下顎前歯角度は22度より明らかに大きい

実際の8020達成者(80〜90代)の側貌写真を確認すると、
30〜35度程度の前方傾斜がある人が非常に多いことがわかります。

これは「22度に収めないといけない」という単純な情報とは異なり、
80歳を超えても破綻していないということは、その角度が生体にとって正しい位置だったことを意味します。


2. 日本人は白人より前歯が前方傾斜しやすい民族である

日本人と白人を比較した研究では、
日本人は白人に比べて前歯が前方傾斜しやすい骨格的特徴があることが示されています。
(参考論文:ResearchGate 論文リンク

つまり、日本人は平均的に24〜27度、上位30%では28〜33度といった角度が自然であり、
白人基準の22度に合わせる必要はありません。


3. アフリカ系の人々はさらに前方傾斜が大きい

アフリカ系アメリカ人を対象にした研究でも、
白人基準ではなく、より前方傾斜した前歯が正常値であることが示されています。
(参考論文:Springer 論文リンク

このように、民族ごとに前歯角度の基準は異なり、「22度だけが正解」という考え方は不適切です。


4. 多民族サンプルでも基準値はさまざま

さらに、多民族のサンプルを用いた研究では、
民族・地域によってセファロ基準値が異なることが明確に示されています。
(参考論文:PMC 論文リンク

この研究は、「個々の民族や個体に合った基準で前歯角度を考えるべき」だという重要な示唆を与えています。


5. 東南アジア(タイ人)でも白人基準は当てはまらない

タイ人成人を対象とした研究でも、
白人とは異なるセファロ標準値が示されており、
東南アジア系の基準は独自の範囲にあることが報告されています。
(参考論文:Chula Digital 論文リンク

これにより、「すべての人に22度を当てはめる」のではなく、個々の骨格に合わせた診断が必要であることがわかります。


6. こむら小児歯科・矯正歯科の考え方

当院では、前歯角度を「見た目」だけの理由で人工的に倒す治療は行いません。
健康な状態を維持するためには、次の原則が必要です。

  • 歯軸を倒しすぎない(舌房確保)
  • 骨の中で安全に立つ方向を優先
  • 成長期は自然な萌出方向に誘導
  • 成人はCT必須で三次元的に根の位置を把握

SNSで見かける単純な基準よりも、自分自身の骨格に合った歯軸を知ることが重要です。
医学的根拠に基づいて丁寧に説明いたします。


参考文献(リンク付き)

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こむら矯正歯科
CT診断・セファロ分析による根拠ある設計をもとに、ワイヤーを使わない矯正治療を提供しています。 「Delicate. Natural.」の理念のもと、健康的で自然な歯並びを大切にしています。 ▶ 公式サイトはこちら
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