後戻りってご存知ですか?
歯並びや噛み合わせの改善を目指して矯正治療を受けたあと、「きれいになった歯並びが少し戻ってきた気がする」と感じる方は少なくありません。
時間と費用をかけて整えた歯並びが変化してしまうのは、誰にとっても納得しにくいことだと思います。
この記事では、矯正治療後に起こりうる「後戻り」と、そのほかの代表的なリスクについて、原因と対策を整理します。
矯正後の歯並びと噛み合わせを長く守るために、知っておいていただきたいポイントをご紹介します。
矯正後のリスクについて
矯正治療は「装置を外したら終わり」ではありません。治療後は、歯や歯ぐき、骨などが新しい状態に適応していく期間があり、その間にいくつかのリスクが起こり得ます。代表的なものを見ていきましょう。
【リスク1】矯正の後戻り
後戻りとは、矯正で整えた歯並びが、治療前の状態に近づく方向へ変化していく現象です。
主な原因
◎ 保定装置(リテーナー)の不使用・使用不足
矯正後の歯は、周囲の骨や歯ぐきの組織が新しい位置に適応する途中です。リテーナーは、この適応が進むまで歯を安定させ、変化(いわゆる“relapse”)を起こしにくくするために使います。
◎ 歯周組織(歯ぐきや骨)が安定する前に保定を中断
歯が動くのは、骨が「作り替わる(リモデリング)」性質を持っているためです。矯正後は、この作り替わりが続くため、一定期間は歯が動きやすくなります。リテーナーを途中でやめると、その影響が出やすくなります。
◎ 舌癖や口呼吸など、日常の力のかかり方
歯は強い力だけでなく、弱い力が長時間続くことでも位置が変化します。舌で歯を押す癖、口呼吸、頬杖などは、歯列に少しずつ影響することがあります。
【リスク2】虫歯・歯周病による歯の動揺
矯正後も毎日のケアを油断すると、虫歯や歯周病によって歯や歯ぐきの健康が損なわれることがあります。
主な原因
◎ ブラッシング不足による虫歯
矯正装置が外れると「一区切り」と感じ、磨き方が雑になることがあります。虫歯で歯の形が変わると、噛み合わせや歯並びにも影響する可能性があります。
◎ 歯周病による歯ぐきの退縮や骨の吸収
歯周病は歯を支える骨を減らし、歯が揺れやすい状態を作ります。支えが弱くなると、歯並びが変化しやすくなります。
【リスク3】噛み合わせの不安定化
矯正治療は見た目だけでなく、噛み合わせの設計が重要です。噛み合わせが不安定だと、日常の食事や会話の力が「偏って」入りやすくなり、結果として歯並びが変化しやすくなります。
主な原因
◎ 治療設計や終了時の微調整が不十分
噛み合わせが整理されないまま治療を終えると、特定の歯に負担が集中し、歯の位置が変化するきっかけになることがあります。
◎ 親知らずの萌出(ほうしゅつ)や、奥歯まわりの環境変化
親知らずが生える過程や、奥歯周辺の変化が噛み合わせに影響することがあります。実際に影響が出るかどうかは、向き・スペース・咬み合わせの状態などで変わるため、レントゲン等で状況を確認して判断します。
どうして後戻りしちゃうの?
矯正治療で歯の位置を変えるとき、歯の周囲では骨が作り替わりながら適応していきます。これは大人も子どもも同じです。
一方で、歯は「一度並べたら固定される」わけではありません。身体が生涯変化するのと同じように、歯も少しずつ変化します。矯正直後は特に、その変化が出やすいタイミングです。
だからこそ、矯正後の歯並びを守るために、保定装置(リテーナー)が必要になります。
成人の方や、舌の癖・口呼吸など日常の力の影響を受けやすい方は、リテーナーを長期的に使うことで安定しやすくなります。
後戻りのリスクを防ぐ4つのポイント
【方法1】リテーナーの正しい使用を徹底する
リテーナー(保定装置)は、矯正後の歯並びを守るための中心になります。
ポイント
◎ 決められた装着時間を守る
矯正直後は、食事と歯みがき以外は装着するよう指示されることもあります。自己判断で装着時間を減らさず、歯科医師の指示に従ってください。
◎ 破損や変形に注意する
リテーナーが変形していたり合わなくなっていると、保定効果が落ちます。違和感や痛みがある場合は、無理に使い続けず早めにご相談ください。
◎ 使用期間を自分で決めてやめない
「いつまで必要か」は、歯並び・噛み合わせ・歯周組織の状態・癖の有無で変わります。終了のタイミングは必ず歯科医師と相談して決めることが重要です。
【方法2】生活習慣を見直す
日常の癖や習慣が、歯並びに想像以上の影響を与えることがあります。
改善したい癖の一例
◎ 舌で前歯を押す癖(舌癖)
舌が無意識に前歯を押していると、前歯が少しずつ前に出たり、すき間が出ることがあります。MFT(口腔筋機能療法:舌や唇などの使い方を整えるトレーニング)を行うことも有効です。
◎ 口呼吸
口が開いた状態が続くと、唇・頬・舌のバランスが崩れ、歯並びに影響が出ることがあります。鼻づまりなど原因がある場合は耳鼻科での相談も選択肢になります。
◎ 頬杖・うつ伏せ寝・横向き寝
片側だけに長時間力がかかる習慣は、歯並びや顎のバランスが乱れる原因になることがあります。
【方法3】定期的なメンテナンスを受ける
治療後も定期的に通院し、歯並びと噛み合わせの状態をチェックすることが重要です。
定期チェックのメリット
◎ 後戻りの「兆し」を早期に発見できる
ご自身では気づきにくい小さな変化も、専門家のチェックで早めに対応できます。
◎ リテーナーの状態を確認・調整できる
合っているか、ゆるくなっていないか、欠けていないかを確認し、必要に応じて調整・再製作を行います。
◎ 虫歯や歯周病の早期発見につながる
歯や歯ぐきの健康が、歯並びを安定させるための土台になります。
【方法4】親知らずの管理を行う
親知らずが歯列に影響を与える可能性がある場合、レントゲンで向きや位置を確認し、必要に応じて抜歯も含めて検討します。判断は「一律」ではなく、スペース・向き・清掃性・噛み合わせなど複数要素で行います。
◎ 横向きや斜めに生えている親知らずは要注意
奥歯周辺のトラブル(清掃不良、炎症、噛み合わせへの影響)の原因になり得ます。
◎ 成長期のお子さまの場合
発育の状況を見ながら、適切なタイミングを判断していきます。
適切な時期に親知らず(前から8番目の歯)を管理することが(特に小臼歯を抜かなかったケースでは)重要になることがあります。
ここからは、親知らずと歯並びの変化が関係したケースをもとにお話しします。以下の方はマウスピース矯正ではなく、ワイヤー矯正を行ったケースです。
矯正装置を外した後は、半年間リテーナーを昼夜、その後半年は夜のみ使用されていましたが、その1年後にはリテーナーをやめてしまわれました。
最初
↓上の親知らず(写真の矢印の歯)が下に降りてきたら、数年後に抜歯を検討しましょうということで、年に一回くらいのペースで来院されていました。

2年後
下の写真↓は二年後です。親知らずがかなり降りてきました。この時点では、すでにリテーナーは使用されていませんでした。

4年後
↓さらに二年後です。この頃には「あと1年くらいしたら抜歯を検討しましょう」とお話ししていました。
リテーナーは入れていませんでしたが、奥歯までしっかり動かす全体矯正を行っていたため、この時点では歯並びは良い状態をキープできていました。

9年後
そこからさらに5年後に来院されました。↓ 上の親知らずが大きく下降して7番目の歯に食い込むようになり、奥から前へとドミノ倒しのように歯が押され、前歯まで傾いてしまいました。
このようなケースでは、親知らずを抜歯したあとに、再度全体的な矯正が必要になることがあります。
小臼歯を抜かずに矯正を行ったケースでは、親知らず4本の向きやスペースによって、歯並びに影響が出ることがあります。

上の写真は、そのような変化が起きた一例です。
こうした事態を避けるために、親知らずの向き・位置・噛み合わせへの影響をレントゲンで確認し、適切なタイミングで管理(経過観察/抜歯検討)することが大切だと考えています。
↓別の方の写真です。このように、上の一番奥の歯が噛み合わせや清掃性に悪影響を与える可能性がある場合、抜歯を含めて検討します。

保定装置(リテーナー)を装着して、後戻り防止を
歯が後戻りを起こしにくい状態にするために、保定期間中はリテーナーという、動いた歯並びを安定させる装置を装着します。
「矯正は終わったのに、また装置をつけるの?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、歯並びを守るためには、保定装置を適切に装着することが重要です。
保定装置にはワイヤー状のものや、透明に近いマウスピース型のものまで、いくつか種類があります。
下の写真は上顎用のリテーナーです。(当院では今はあまり使わなくなってきました)
歯ぎしりや歯の食いしばり癖など、口や舌、あごの動きの習慣も、歯並びに影響を与えることがあります。

下の写真は下顎用のリテーナーです。
こういった従来型のリテーナーは歯に「点」で接触して、少し遊びがあるため、ワイヤー矯正が全盛だった時代は、歯が微妙に動きながら安定した位置に落ち着くことを期待して使用していました。

しかし、現在は治療計画をより精密に立てられるようになり、保持力の高いマウスピース型のリテーナー(例:ビベラリテーナー等)を選択することが増えています。
リテーナーはいつまで使うの?
リテーナーの目的は、歯が動いたあとに周囲の骨や歯ぐきの組織が安定するまで支えること、そしてその後も起こりうる“自然な変化”をできるだけ小さくすることです。
装着時間は、最初は長め(食事と歯みがき以外)→その後は夜間中心へ移行していくことが多いです。
また、歯は生涯少しずつ変化するため、ケースによっては長期的に夜だけ続けるという選択が現実的になります。
後戻りが起こりやすい人の特徴
後戻りのリスクが高くなりやすい代表的なパターンをご紹介します。
◎ 部分矯正のみを行ったケース
部分矯正は「動かせる範囲」と「動かせない範囲」がはっきりしています。見えている部分だけを動かすと、全体の噛み合わせバランスが崩れやすく、変化が起きやすいことがあります。
◎ 保定装置(リテーナー)の使用が十分でなかったケース
装着時間が不足したり、指示より早くやめてしまうと、歯は変化しやすくなります。
矯正治療は、「歯を動かす期間」と「歯を安定させる期間」の両方がそろって成立します。
◎ 舌癖・口呼吸・頬杖などの癖が残っているケース
舌で前歯を押す、口が開いている、うつ伏せや横向きで長時間寝る、片側だけで噛むなどの癖は、歯並びにじわじわ影響します。
◎ 親知らずが残っているケース
親知らずが生える向きやスペースによって、奥歯周辺の環境が変わり、歯並びに影響することがあります。矯正前後でレントゲンを撮り、必要であれば抜歯も含めて計画的に対応します。
戻ってしまった歯並びは自力で治せるの?
「少し戻ってきた気がするから、自分で押して戻せないか」と考える方もいますが、自己判断で歯並びを動かそうとすることはおすすめできません。
歯は弱い力でも動きますが、力の方向や強さを誤ると、
・歯や歯ぐきに負担がかかる
・噛み合わせがかえって不安定になる
・歯根短縮(歯の根が短くなる)などのリスクが上がる
といった問題が起こり得ます。気になる変化があれば、自己判断せずにご相談ください。
後戻りしてしまった場合の治療の選択肢
後戻りの程度や原因によって、対応は変わります。代表的な選択肢としては、次のようなものがあります。
◎ ダイレクトボンディング・ラミネートベニア・セラミッククラウン
見た目の改善を目的に、歯の表面を修復する方法です。ただし、歯を削る必要があるため、適応を慎重に判断します。
◎ ワイヤー矯正・マウスピース矯正(インビザラインなど)
歯を削らずに歯並びそのものを整える方法です。
「どの方法が合うか」は、歯の状態・噛み合わせ・年齢・ご希望で変わるため、検査と診断の上で提案します。
後戻りの確率について
歯は生涯少しずつ変化するため、リテーナーを使わない場合は、歯並びの変化が起こりやすくなります。
だからこそ、リテーナーの装着と、力のかかり方(癖・習慣)の見直しが、矯正後の歯並びを守る上で重要になります。
まとめ
矯正治療は、「歯を動かす期間」が終わったら完了、ではありません。治療後の保定期間や、生活習慣の見直し、定期的なメンテナンスまで含めて、はじめて治療として成立します。
後戻りや虫歯、噛み合わせの不具合といったリスクを理解し、
・リテーナーの適切な使用
・舌癖や口呼吸などの生活習慣の調整
・定期メンテナンスの継続
・親知らずの計画的な管理
を行うことで、矯正の結果を長く維持しやすくなります。
矯正治療後の過ごし方は、年齢や噛み合わせ、癖の有無によって変わります。
「自分(または子ども)の場合はどう進めるべきか」を知りたい方は、年齢別のページもあわせてご覧ください。
小学生向けインビザライン(Invisalign First)についてはこちら▶
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