Delicate. Natural.
繊細な関わりで、自然なあなたへ
歯を並べるのではない。かたちを整える
それが、Oral Form/p>
転院(矯正治療の途中で医院を変えること)は、多くの方が「まず相談してから決める」流れになります。
当院でも、いきなり転院を決めていただく必要はありません。
ただし、転院後は当院が結果責任を担う立場になるため、相談の時点で「成立条件」を整理する必要があります。
このページでは、相談前に知っておくべき前提と、当院の受け入れ条件を説明します。
1)転院の問題は「装置」ではなく「ゴールのズレ」
転院を考えるとき、「装置が違う」「先生が違う」といった点を気にされる方は多いです。
しかし本当の問題は、治療のゴール(設計の考え方)が医院ごとに異なることです。
矯正治療は、ただ歯を並べる作業ではありません。
「どこをゴールにするか」を決めた瞬間から、設計は始まっています。
たとえば同じ”歯並び”でも、次のような判断は医院ごとに異なります。
- 前歯をどこまで下げるか
- 抜歯するか、しないか
- 奥歯の噛み合わせをどこに設定するか
- 横顔のバランスをどの基準で評価するか
- 保定(治療後に安定させる工程)をどう組み立てるか
そのため、別のゴールに向かって歯が動いた後では、同じ装置を使っても「同じ終点」にたどり着けないことがあります。
これが、転院でミスマッチが起きやすい最大の理由です。
参考:米国矯正歯科学会(AAO)は、転院によって治療が複雑になり、期間が延びる可能性があること、また転院後は “transfer patient(転院患者)” として扱われることを説明しています。
2)転院先は「結果の責任」を負う立場になる
転院を受け入れた医院は、その時点から治療結果に対して責任を負います。
しかし、転院先の医院は、治療開始時の重要な判断には関わっていません。
- 最初の診断内容
- 設計の前提となった考え方
- 抜歯などの重要な判断
- どの歯を、どの意図で、どの方向へ動かしたか
これらの情報が共有されたとしても、すでに動いた歯の位置や抜歯の有無によっては、当院の設計基準(Oral Form)で完成まで責任を持って成立させることが難しい場合があります。
ここで大切なのは、これは「腕の問題」ではなく、「その状態から当院のゴールを成立させられるか」という成立条件の話だということです。
例え話(理解を早くするために)
転院の難しさは、すでに編集が進んだ映画の素材を、新しい編集者が完成まで引き継ぐようなものです。
引き継いだ時点で、後から同じ条件に戻せない部分もあります。
使える素材や前提が限られていると、思うようにストーリーを組み立てられないこともあります。
それでも新しい編集者は、完成版としての結果責任を負う立場になります。
だからこそ引き継ぐ側は、「この状態から、責任を持って完成させられるか」を慎重に判断する必要があるのです。
3)転院では、費用と期間が増えることがある
転院では、ただ「続ける」だけでも、以下のような再整理が必要になります。
- 現在の状態を正確に把握する(記録・検査の整理)
- ゴールを再設定する(再診断・再設計)
- 新しい設計に沿って計画を組み直す(再計画)
AAOも、転院によって治療が複雑になり、期間が延びる可能性があることを説明しています。
転院したからといって「安くなる」「早く終わる」とは限りません。
設計を組み直す必要が生じれば、その分だけ工程は増えます。
4)転院前に整理すべき3つのポイント
ミスマッチを防ぐために、次の3点を「事実」として整理しておいてください。
(A)転院元(いま通っている医院)に確認すること
1. いまの治療のゴールは何か
・最終的にどんな噛み合わせを目指しているか
・抜歯した場合、その目的は何だったか(スペース確保/前歯の位置調整/噛み合わせ改善など)
2. どんな記録(資料)があるか
・検査データ(画像・計測値)
・治療計画の考え方
・どの歯を、どんな意図で、どれくらい動かしたか
(B)転院先(当院)に確認すること
3. どこまで引き受けられるか
・仕上げだけなのか
・再診断からやり直すのか
・保定のみなのか
ここが曖昧なまま始めると、大きなミスマッチにつながります。
なお、上記の整理ができていても、当院の設計基準(Oral Form)と合わない場合はお受けできないことがあります。それは「気持ち」の問題ではなく、当院が結果責任を担保できるかどうかで判断しています。
5)当院が転院をお受けできる条件
当院で転院をお受けできるのは、以下の2つを両方とも満たす場合に限ります。
転院の受け入れ条件(2つとも必須)
- ゴールの整合性:現在の歯の状態が、当院の設計基準(Oral Form)で医学的に許容できる範囲にあること
- 費用の整合性:再診断・再設計にもとづき、当院の料金体系で矯正料金が新たに発生することにご同意いただけること
なぜ料金が新たに発生するのか
転院後は、当院がその先の結果に責任を持つ立場になります。そのため、現在の状態をゼロから再評価し、再診断・再設計・再計画を行います。
これに伴い、当院の料金体系にもとづいて矯正料金が発生します。
この2つの条件が揃わない場合は、当院として結果責任と説明責任を担保できないため、お受けしておりません。
結び
転院でミスマッチが起きるのは、患者様のせいでも、前の医院のせいでもありません。
多くの場合、原因はシンプルです。「ゴール(設計の考え方)」と「責任の範囲」が一致していなかったということです。
転院を考え始めた時点で、まずは設計の前提と資料を整理してみてください。
当院では、転院の可否も含めて、検査と設計の観点から誠実に判断いたします。
出典(AAO)
AAO(米国矯正歯科学会)Orthodontic FAQs(transfer patient/転院によって治療が複雑になり、期間が延びる可能性等)
https://aaoinfo.org/resources/faqs/page/13/
AAO Updates Informed Consent Form(治療途中で転院する事項を同意書に含めた旨)
https://www2.aaoinfo.org/aao-updates-informed-consent-form/