大人の矯正は「動かせる限界」を見極めることが重要
大人の矯正治療の特徴
インビザライン治療では、治療を始める前に、すべての歯の動きを細かく計画します。
当院では、その設計を院長が責任を持って行い、必要に応じてInvisalign社の認定ファカルティーと連携しながら、どう動かすかを緻密に検討しています。
骨格、歯の角度、咬み合わせ、筋機能、過去の治療歴――一人ひとりの条件をもとに、「この歯をどこまで導くか」を見極め、治療の動きを設計しています。
大人の矯正の限界を理解する
成人は骨格が固まっており、骨を大きくすることは、ほぼできません。⚠️
また35歳以降では、歯ぐきが健康でない場合も多いため、歯が骨から出ないように繊細かつ正確に動かす必要があります。⚠️
大人の矯正で起こりやすいこと
子どもと大人の矯正の違い
子どもの矯正
- 骨がやわらかい
- 顎を広げやすい
- 成長の力を利用できる
- 歯根の先が短くなるリスクが少ない
- 適応力が高い
- 保定期間が短い
大人の矯正
- 骨が硬い
- 顎を広げることはほぼできない
- 成長は完了している
- 歯周病のリスク
- 歯の動きが遅いことがある
- 保定期間が長い
大人の矯正で考慮すべき要素
1. 骨格の条件
- 上顎と下顎のサイズと位置関係
- 顔のタイプ(ドリコ・メジオ・ブレーキー)
- 顎の成長方向(すでに完了)
- 骨の厚みと密度
2. 歯の角度と位置
- 現在の歯の角度
- 歯根の長さと形状
- 歯根と骨の位置関係
- 歯根の吸収の有無
3. 咬み合わせ
- 現在の咬合関係
- 顎の位置(顎位)
- 咬む力の強さ
- 顎関節の状態
4. 筋機能
- 舌の位置と動き
- 唇の力
- 頬の筋肉の影響
- 呼吸のパターン
5. 過去の治療歴
- 抜歯の有無と部位
- 神経を取った歯
- 被せものやブリッジ
- 過去の矯正治療
当院の設計プロセス
安全で確実な設計のための5つのステップ
STEP 1: セファロ分析
骨格のタイプと顎の位置関係を正確に把握します。McNamara分析やRicketts分析を用いて、標準値と比較します。
STEP 2: CT診断
歯根と骨の位置関係を三次元的に確認。歯を安全に動かせる範囲(安全域)を見極めます。
STEP 3: 咬合分析
現在の噛み合わせと顎の位置を詳細に分析。顎関節の状態も確認します。
STEP 4: 初期設計
これらのデータを統合し、クリンチェック(専用設計アプリ)で初期設計を作成。横浜トリートセンターの優秀なクリニカルデザイナーと協力します。
STEP 5: 精密化
インビザライン社認定ファカルティ(指導歯科医)の監修のもとで、何度も修正を重ね、安全で実現可能な設計に仕上げます。
動かせる限界を超えるとどうなるか
⚠️ 無理な移動のリスク
- 歯根露出:歯が骨から飛び出し、歯ぐきが下がる
- 歯根吸収:歯の根が短くなり、歯の寿命が短くなる
- 歯の動揺:歯がグラグラになる
- 痛みや炎症:治療中に強い痛みが続く
- 後戻り:治療後に元の位置に戻りやすい
- 顎関節症:顎に負担がかかり、顎関節に問題が生じる
症例:限界を見極めた治療

経過の観察も重要
骨の硬さや癖、舌の圧などの影響で、歯の動きが予定と異なってしまう可能性もあります。
経過を丁寧に観察し、必要に応じて再設計を行うことも、治療成功の鍵となります。
よくある質問
Q1. 大人でも歯を抜かずに矯正できますか?
A. 可能な場合もありますが、すべてのケースで非抜歯が適切とは限りません。骨格の状態、歯の大きさ、現在の歯並びの状態によって判断します。CTとセファロ分析で安全域を確認した上で、最適な方法を提案します。
Q2. 何歳まで矯正できますか?
A. 年齢の上限はありません。当院では60代の方も治療を受けられています。ただし、歯周病の状態や全身の健康状態によって、治療の可否や方法が変わります。まずは検査で状態を確認することをお勧めします。
Q3. 治療期間はどのくらいですか?
A. 大人の場合、通常2〜3年程度です。ただし、歯並びの状態や治療のゴール設定によって異なります。当院では約2年で矯正を終了し、残り3年を保定として使用するケースが多いです。
まとめ
- 大人の矯正では、骨格の限界を理解することが最重要
- セファロ分析とCT診断で正確に「動かせる範囲」を把握
- 無理な移動は様々なリスクを伴う
- 経過観察と必要に応じた再設計も重要
- 一人ひとりの条件に合わせた個別設計が成功の鍵