歯列矯正の完了後は、リテーナー(保定装置)で歯と噛み合わせの位置を保つ期間=保定期間があります。
この期間の過ごし方が、きれいな配置を長く保てるかに大きく影響します。
リテーナーとは?
リテーナーは、矯正直後の不安定な歯と周囲組織を、計画した位置にとどめるための装置です。
矯正直後は歯槽骨の再構築が続き、歯根膜や軟組織に「元の位置の記憶」が残っているため、以前の配置へ戻ろうとする力(後戻り)が生じやすくなります。
周囲組織が新しい位置を受け入れ、安定するまでの間、リテーナーで維持の設計を行います。
なぜ後戻りが起きるの?
矯正中は、歯にかけた力に応じて骨の吸収と添加が起こり、歯が新しい位置に導かれます。
治療終了直後は骨の詰まり方が十分でないことがあり、歯根膜の繊維や筋機能・生活習慣などの影響で、旧位置へ戻る方向の力がかかりやすくなります。
そのため、保定期間中のリテーナー装着と生活指導が重要です。装着期間や方法は、歯並びの経緯・筋機能・日常習慣などを加味して歯科医師が個別に判断します。
リテーナーの基本的な使い方
開始初期は、食事と歯みがき以外は連続装着(目安:終日)を推奨する場合が多いです。
半年〜1年ほど経過し安定が確認できれば、夜間のみ → 就寝時のみ → 週数回のように段階的に装着時間を短くします(個別差あり)。
後戻りの出やすさは歯列・筋機能・舌癖・生活習慣に左右されるため、装着スケジュールは定期チェックで調整します。
装着ルールを守らないと?
装着不足が続くと、前歯部のわずかなすき間や段差など、軽度の後戻りが生じることがあります。
合わなくなった場合は、再設計(リファイン)やリテーナー再作製が必要になることもあり、時間的・経済的な負担が増える可能性があります。
インビザライン治療における保定
インビザラインでも、保定は治療の一部です。治療中にマウスピースの扱いに慣れているため、保定装置への移行後も管理しやすいと感じる方が多いのは利点です(個人差あり)。
保定装置には、マウスピース型(例:Viveraリテーナー)のほか、舌側固定ワイヤーやベッグタイプリテーナーなどがあります。適応は、リスクと生活背景に応じて選択します。
当院ではインビザライン・コンプリヘンシブ(5年間、追加アライナーの再設計に対応するプラン)を基本に採用しています。
そのため、治療完了後5年以内であれば、状況に応じてインビザラインで再調整を検討できる期間が確保されます(適応・症例により異なります)。
のちにViveraリテーナー等の保定装置へ移行し、長期の維持設計を行います。
保定する期間の目安
お子様:動かした期間と同程度の保定が必要とされることが多く、顔貌が完成するまでは夜間装着を勧める場合が一般的です。
成人:顔貌・筋機能が既に安定しているため、長期(場合により長期継続的)のリテーナー使用を前提とした設計をお勧めします。
特に終了直後〜1年は後戻りが出やすい時期です。食事と清掃以外は連続装着を基本に、経過を見ながら段階的に短縮します。
装着時間を守らないと、再設計やリテーナー再作製が必要になることがあります。
当院の方針:11歳以上の多くの症例でインビザライン・コンプリヘンシブを用いているため、5年以内であれば後戻りの調整をインビザライン再設計で検討できる場合があります(個別判断)。

