受け口(下の前歯が上の前歯より前に出る噛み合わせ)は、必ずしも「病気」というより、骨格や歯並びの“個性”として現れることがあります。下あごが長い/短い自体を、ただちに異常と決めつけるものではありません。
一方で、受け口は見た目だけの話ではありません。AAO(米国矯正歯科学会)も、受け口(underbite)は噛みにくさ・発音の問題・歯の摩耗・あごの不快感につながり得ると説明しています。 American Association of Orthodontists
つまり「何が困っているか(機能)」と「どの原因か(歯の当たり方か/あごの成長傾向か)」を分けて評価することが大切です。


★骨格性の受け口のケースでは、成長期の早い段階から、ファイシャルマスクやチンキャップなどの装置を用いて、成長の方向を管理しながら経過を見ていくことがあります。(注:当院では行っていません)

前期矯正を行っても、中学生でまた受け口になることがあります。これは矯正の後戻りではなく、下顎の成長が原因です。身長の伸びを止めることができないのと同じで、下顎の成長を止めることはできません。
日本を代表する矯正歯科医も、このケースでは「初診から完了までの定期観察期間など、治療以外のすべての管理を含めれば、10年以上通院することも珍しいことではありません。▶ と書いておられます。受け口は成長の影響を受けやすいため、治療そのものだけでなく、定期的な観察(経過チェック)が長く必要になることがあります。
骨格(あごの位置や大きさ)そのものを大きく動かす必要がある重度のケースでは、成長が止まった後に、矯正に加えて外科的矯正(顎の手術=orthognathic surgery)が検討されることがあります。
下顎が上顎に対して大きく成長してしまった場合には、第二期治療で外科的矯正(顎の手術)が検討される場合があります。
AAOは、外科的矯正は骨格の問題によって“噛む・飲み込む・話す”に支障がある場合などに行う治療だと説明しています。 American Association of Orthodontists
— 保護者の方へ —
私たちは長年、たくさんのお子さまの成長を間近で見守ってまいりました。その積み重ねから申し上げる「この先どのように育っていくか」という診断は、高い確率で、その後の実際の経過と一致してまいりました。だからこそ、将来的に外科矯正(あごの手術をともなう矯正)が必要になる可能性が高いと診断したお子さまについては、はじめから外科矯正を手がけている矯正歯科で治療を受けられることを、率直におすすめしています。
保護者の方は、毎日いちばん近くでお子さまを見守ってこられた、何よりの理解者でいらっしゃいます。お迷いになるとすれば、それはただ、判断の材料となる専門的な情報が、まだお手もとにそろっていないからにすぎません。必要な情報をおそろえするのは私たちの役目ですので、そこはお任せください。
お子さまのことだからこそ難しい、ということがあります。深く愛しておられるからこそ、ご自分のお子さまのこととなると、かえって落ち着いて見つめにくくなる。これは多くの方に共通することで、ふだんは物事を冷静に見極められる方でも、お子さまへの愛情が深いぶん、いつもの冷静な判断が難しくなります。そんなときは、「お友達のお子さま」「親戚のお子さま」のことだったら自分はどう勧めるだろう、と思い描いてみてください。ふだんどおりの落ち着いた目で見つめられて、ほんとうに良い選択が見えやすくなることがあります。
そのうえでお願いしたいのは、信頼できる複数の専門家のお話を聞き、情報を集めていただくことです。お迷いは、無理に「決めよう」となさるより、十分な情報がそろうことで、自然と晴れてまいります。
最後にお子さまを守るのは、思いの強さそのものよりも、治療の「結果」だということを、私たちは大切にしています。外科矯正が視野に入るケースでは、はじめから手術をともなう治療まで一貫して診ている医院で始められることに、大きな意味があります。最初から最後まで方針が一本につながることが、お子さまにとっていちばん良い結果につながると考えているからです。
私たちからは、信頼できる紹介先をお伝えしています。複数の先で実際にご相談いただいたうえで、お選びください。どこを選ばれても、私たちが信頼してお任せできる先ばかりですので、どうぞ安心してお進みください。
成人の場合は、下顎の成長がないため、当院でも受け口の矯正を行っています。



