矯正治療を検討しているとき、こんな話を聞いたことはありませんか?
「矯正をすると、歯の根っこが短くなることがある」
これは「歯根吸収(しこんきゅうしゅう)」と呼ばれる現象で、矯正治療のリスクのひとつとして知られています。怖く聞こえるかもしれませんが、正確に理解しておくことが大切です。
この記事では、歯根吸収とは何か、なぜ起きるのか、そしてCT診断がそのリスクをどう下げるのかを解説します。
歯並びのご相談はお気軽に
LINEで無料相談歯根吸収とは何か?
歯には、歯ぐきの上に出ている「歯冠(しかん)」と、骨の中に埋まっている「歯根(しこん)=根っこ」があります。
歯根吸収とは、この根っこが短くなったり、先が丸くなったりする現象のことです。矯正治療中に歯を動かす力が加わることで、根っこの先端の組織が少しずつ吸収(溶ける)されることがあります。
軽度の歯根吸収は矯正治療においてよく見られ、多くの場合は歯の機能に大きな影響を与えません。しかし、重度になると根っこが大幅に短くなり、将来的に歯の安定性に影響することがあります。
📌 ポイント
歯根吸収はゼロにはできませんが、「最小限に抑える」ことは可能です。
そのために重要なのが、治療前の正確な診断と、適切な力のコントロールです。
歯根吸収が起きやすいのはどんなとき?
① 歯を動かす量が多い・距離が長い
歯の移動量が大きいほど、根っこへの負担も増えます。特に前歯を大きく後退させる(出っ歯の治療など)場合や、長期間にわたる治療では注意が必要です。
② 骨の壁に根っこが当たる
根っこの先が骨の硬い壁(皮質骨)に当たりながら移動すると、根っこへの圧力が高まります。CT診断なしではこの「骨の壁」の位置を把握することが難しく、知らないうちに根っこが圧迫されるリスクがあります。
③ 往復する力(ジグリングフォース)がかかる
歯が前後に繰り返し揺さぶられる状態(ジグリングフォース)は、歯根吸収のリスクを高めることが知られています。ワイヤー矯正では、アーチワイヤーの調整のたびに力の方向が変わることがあり、この往復力が生じやすい場合があります。
④ もともと根っこの形が短い・細い
もともと根っこが短めだったり、先端が丸い形の場合、吸収のリスクが高い傾向があります。これは治療前のCTで確認できます。
術者の技量の問題ではなく、装置の構造の問題です
当院には、矯正歯科の専門的な認定を受けた歯科医師がワイヤー矯正を行った方が、数年後に「もう一度整えたい」とご相談に来られることがあります。そのときにCTで歯根を確認すると、前歯の根が短くなっているケースがあります。


※ ClinCheck® の歯根表示です。歯肉・歯牙および歯根移動のシミュレーションであり、実際の臨床結果とは異なる場合があります。
ワイヤー矯正は、複数の歯を1本の線でつないで動かします。ある歯を動かすと隣の歯にも力が伝わり、調整のたびに力の向きが変わります。その結果、歯が行ったり来たりする力(ジグリングフォース)が生まれやすくなります。これは術者の技量ではなく、装置の構造から生まれるものです。
再矯正のご相談では、当院はまず歯根の状態を確認します。すでに短くなっている根に、同じやり方でもう一度力をかけるわけにはいかないからです。
💡 院長のひと言
インビザラインは「見えない矯正」として選ばれることが多いですが、当院では「歯を無理に動かさない治療」を実現するために使っています。段階移動と事前設計が、リスク管理につながると考えています。
CT診断が歯根吸収リスクを下げる理由
CT(コンピュータ断層撮影)は、歯の根っこと骨の関係を立体的に把握するための検査です。歯根吸収リスクの管理において、CTは次の点で重要な役割を果たします。
① 骨の壁の位置を事前に把握できる
前述の通り、根っこが骨の硬い壁に当たりながら移動すると吸収リスクが高まります。CTがあれば、「この方向に動かすと骨の壁に当たる」という情報を治療前に得られます。移動ルートを事前に修正することで、リスクを大幅に下げることができます。
② もともとの根っこの形・長さを確認できる
レントゲン(平面写真)では根っこの厚みや本来の長さを正確に把握できません。CTの立体画像で根っこの形状を事前に確認しておくことで、もともとリスクが高い根っこを持つ歯に対して、移動量を慎重に設計できます。
③ 治療中の変化を比較・評価できる
治療前後のCTを比較することで、根っこに変化が生じていないかを確認できます。問題が見つかった場合は、早期に治療方針を見直すことができます。
歯根吸収についてよくある質問
歯根吸収は治療後に治りますか?
一度短くなった根っこは、自然に元の長さに戻ることはありません。ただし、軽度であれば機能上の問題が生じることはほとんどなく、吸収が止まることで安定します。治療前にリスクを把握・管理することが最も重要です。
インビザラインなら歯根吸収は起きませんか?
インビザラインでも歯根吸収が起きる可能性はゼロではありません。ただし、段階的な移動設計とCT診断を組み合わせることで、リスクを最小限に抑えることを目指しています。
ワイヤー矯正は歯根吸収リスクが高いですか?
装置の構造による違いはあります。ワイヤー矯正は複数の歯を1本の線でつなぐため、調整のたびに歯が行ったり来たりする力(ジグリングフォース)が生まれやすく、これは歯根吸収のリスクを高めることが知られています。インビザラインは1ステージ約0.25mmの一方向の移動を積み重ねる設計なので、この往復する力が起きにくくなります。ただし、装置の名前だけでリスクが決まるわけではありません。移動量、移動のルート、もともとの根の形も関係します。当院は、装置の選択と同じくらい、動かす前にCTで歯根と骨の位置を確認しておくことが大切だと考えています。
まとめ
- 歯根吸収は矯正治療で起きることがあるリスクのひとつ
- 移動量・骨の壁との接触・往復する力が主な原因
- インビザラインの段階移動設計は、ジグリングフォースを抑えやすい
- 歯根吸収は術者の技量ではなく、装置の構造から生まれることがある
- CT診断で骨の壁・根っこの形状を事前に把握し、安全な移動ルートを設計できる
- 「歯を無理に動かさない」という治療方針が、リスク管理の根本
矯正治療を検討している方は、治療前にCT診断を行っているかどうかを確認することをお勧めします。当院では必ずCT・セファロ分析を行った上で治療設計をお伝えしています。
当院は、インビザライン以外のマウスピース矯正装置は使用していません▶
当院のインビザラインは、自由診療で用いる未承認医療機器です。医療広告ガイドラインに基づく表示は自由診療で用いる未承認医療機器についてをご覧ください。



